断熱でお金を失わないために
弓ノ町の家の断熱工事が終わりました。
壁に断熱材を入れた状態の写真がこちら。
なんだか良くわからない写真ですが、これは非常に高い精度で断熱工事がされています。
ピンク色が高性能グラスウールなのですが、柱や間柱、桁の間に隙間がありません。
透明なシートもぴしっと貼られています。グラスウールは湿気ると断熱性能が落ち、水分が抜けにくく壁の中を腐らせる事があるので、水蒸気を通さない防湿(気密)シートを室内側に貼っています。
シートの上に横に入っている桟は、配線用の胴ぶちです。せっかく断熱材をきちんと入れて、シートを貼っても電気屋さんがそれを破ってしまっては意味がありませんので、この胴ぶちの隙間を配線スペースとしています。
一般の人は、この写真のような施工が良いのか悪いのか普通わからないと思います。
家ができてしまえば見えなくなる部分ですし、この段階の現場を見ることも少ないでしょう。
なので、ダメな例も見せちゃいます。もちろん、私が設計監理する現場ではありません。
これのどこがダメなのか?
ぱっと見、断熱材がぐちゃぐちゃに入っているのは誰が見てももわかる思います。
これは袋入りのグラスウールなのですが、袋入りが悪いと言う訳ではありません。
この袋の両端にはのりしろの様な耳がついているのですが、この現場では耳を柱の内側で留めています。
このことで断熱材がたるんで隙間ができてしまっています。また、袋は防湿シートでもあるので、耳と耳を柱の正面で重ね合わせて留めなければいけません。
石膏ボードを貼る時に耳を留めたタッカーが邪魔だからといってこの様に断熱材を入れる大工さんは未だによくいます。
このような現場は実は有名建築家の現場でもよく見られます。
ブログなどで探してみると「断熱材施工中」などと言うタイトルで、このような状態の現場写真をアップしている建築家や工務店がありますが、恥をさらしているようなものです。
もし、あなたがこれから家を建てようと思っていて、工務店や建築家を探しているのなら、彼らの現場ブログで断熱材の施工状況が写っている写真を探してみると良いでしょう。
もし、ぐちゃぐちゃに入った断熱材の写真が出て来たらその会社に頼むのはやめといた方がいいです。
「いや、私はデザイン重視だから断熱材なんて入っていればいいよ。冬、暖かくなくてもいいし。」という方、そういう問題ではないんです。
次の図を見て下さい。
これはグラスウールの施工状態を現した図です。
グラスウールの性能は熱貫流率で現され、数字が低いほど熱が伝わりにくい(断熱性が高い)のですが、同じ断熱材でも入れ方が悪いと性能が半分以下になってしまうのです。
つまり、あなたが断熱材に50万円払っているとすると、施工状態が悪いと25万円捨てたのと同じことになるのです。
それだけではありません。
当然、冷暖房の効きが悪くなり不快であるのと、その分余計な光熱費がかかるので、そこでもまたお金を失うことになります。
さらに、防湿シートの施工が悪いと壁の中に水蒸気が入り、壁内で結露して断熱材が濡れた状態が続き、カビが生えたり悪くすると構造材である木材を腐らせることになります。
大枚はたいて建てた家が倒れるほど(実際にはそれで倒れることはそうそうありませんが)大きな損失はありません。
設計者、施工者を選ぶ時は、見える所も見えない所もきちんとできる人を選びましょう。