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動物病院の設計


先日ファーストテーションをさせて頂いたが始動しました!
動物病院併用と言う設計島建築事務所史上最も大きな規模なので緊張します。
2つの世帯と動物病院が共存するということで、小さな集落又はコミュニティをイメージし、親世帯と子世帯の棟を分け屋根でつなぐ計画としました。
2つの棟をつなぐ屋根には楕円形の吹抜けがあり、そこからてっぺんが飛び出した樹木が2世帯間の緩衝地帯となります。
二世帯住宅においては、生活する上で親世帯と子世帯の距離間が大切だと思います。
世代間の価値観の違いもありますし、近すぎず遠すぎず・・・。
また、店舗併用住宅においては店舗を訪れる人たちとそこに住む人のプライバシーの問題も発生します。
これら機能の異なるボリュームに中をサンドイッチすることで、それぞれのプライバシーを守りつつ良好な関係を作り出せるような構成としています。

今回のご依頼は、当事務所に動物病院の設計経験があったからだとお伺いしています。
動物病院の設計にはいくつかの特殊事情があり、動物病院専門のもあるくらいです。
私は以前の動物病院の設計で獣医の先生と沢山の議論をしたおかげでそれらのノウハウを身につけることができました。
ちなみに、実は私は小学生の頃獣医になりたかったのですが、それは特に設計の役には立ちませんでした(笑)。
ただ、犬や猫を飼っていたことがあるという経験は彼らの生態をいくらか知っているという点では役に立っていると思います。

動物病院は建築基準法上の用途は病院ではなく、物販以外の店舗という扱いになります。
しかしながら、求められる機能は人間の病院と似ているか、それ以上の部分があります。
人間の病院ではそれほど考えないと思われる防臭、防汚、騒音対策などがそうです。
動物が沢山来ることから匂いは大量に発生します。
入った瞬間に獣臭い動物病院はちょっと嫌なので、換気はしっかりしなければなりません。
そして、犬舎など特に匂いが発生する場所からの匂いを待合室などに流入させないように換気経路にも配慮する必要があります。

犬舎はまた入院中のわんちゃんたちが吠えたりするので、近所迷惑にならないように防音をしなければなりません。
できれば、外部とはワンクッションおいてなるべく外に音漏れがないようにしたいものです。
音や匂いの通り道となる換気のダクトをどちら側に出すかも考慮する必要があります。
居住部分への音漏れも最小限にしなければなりませんが、獣医さんによってはまったく音が聞こえないのも患者さん(ワンちゃん猫ちゃん)の様子が分からなくて不安という先生もいます。

待合室の床はおしっこをしたりするコもいるので、汚れが染み込まないような素材を使う必要があります。
その際、特にネックになるのが床と壁の取り合いです。
できれば床と壁は一体で継ぎ目無く施工できるものが望ましいのですが、安易にクッションフロアというのも味気ないので、悩ましいところです。

それから、人間の病院クリニックなどでは、たいていは内科、眼下、耳鼻科、皮膚科のように単科のことが多いですが、動物病院はすべての科を診るので必然的に検査機器や機材が増えて置き場所や収納場所が足りなくなる傾向があります。
薬も外部の調剤薬局は無いので、病院内で調剤することになり薬剤のストックも多くなります。
これらの数や大きさ、配置を把握しておくことも大事になります。

それから、以外と忘れられがちなのが逃走防止対策です。
病院が嫌いなワンちゃん猫ちゃんも多く、彼らは治療から逃げ出そうとものすごい力を見せることもあります。
出入り口は風除室を設け扉を二重にします。
また、結構込み合う動物病院では外で待つ患者さんも多いのですが、今回の提案では先述のを外待ち合いとしています。
外部ではあるのですが、壁で囲まれているため逃走されることがありません(鳥は飛んで逃げてしまいますが)。
四角い中庭に楕円の吹抜けを作ることで、軒下ができ雨の日でも外待ち合いとして使うことができます。
ここにはベンチを置き、水飲み場を設け、中心にシンボルツリーを植えて小さな公園のようになればと思っています。
このような中庭を外待ち合いとした事例は他の動物病院でも見たことがありません。
先述のプライバシーを守り複数のボリュームをつなぐ役割に加えて外待ち合いの機能も加わり、中庭がこの建物の計画の中心的な存在となっています。

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