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だれと作るか〜工務店はどう選ぶ?


「だれと作るか?」

監理を生業とし、施工をしないにとってこれは大きな問題である。

自分の脳内で立ち上がったものを現実に建ててくれる人が必要だ。

お客さんから「施工業者はどうやって探せばいいんですか?」という質問をよく受ける。

多くの人にとって、設計事務所と同じように建築施工業者もあまりなじみのないものなのだ。

逆に知り合いが大工さんなので、とか、友人の工務店に頼んでもいいですか?という人も稀にいる。

しかし、一部の例外を除いてこれはオススメしない。

設計事務所としては、その知り合いの工務店や大工の技量が全くわからないからだ。

ちゃんと図面を読むことができるのか?十分な施工技術はあるのか?こちらの意図を理解してくれるのか?コストは適正か?などなど不安は尽きない。

多くのお施主さんは施工業者難民な訳で、どうしても設計事務所側で施工業者(≒工務店)を紹介することになる。

こちらとしても、自分の設計した建物を納得のいく形で建ててもらわなければならないので、どの工務店と付き合うかは慎重にならざるを得ない。

家を建てたことのない一般の人たちから見ると工務店はどこも同じに見えるかもしれない。

しかし、現実には世の中の工務店というのは本当にピンキリである。

これは営業してるのかどうかわからないような工務店に限った話ではなく、規模もそこそこだったり、ちゃんと宣伝もしている名の知れた工務店でも同じ。

そこで、自分なりに仕事をお願いできる工務店の基準を準備している。

潰れなそうだとか、後々のメンテナンスで面倒見が良いとか、判断基準は本当にたくさんあるのだが全部挙げているとキリがないので、まずは施工面でこれは必ずクリアしていて欲しいという点について書く。

優秀な現場監督

まずは、良い現場監督がいること。

設計者が作曲家なら現場監督はオーケストラの指揮者のようなものだ。

良い演奏家が揃っていれば曲にはなるかも知れないが、良い演奏になるためには良い指揮者が必要なのと同じ。

大工が現場監督を兼ねている工務店もある。

それで上手くいっている工務店もあるので一概に否定はしないが、私はやはり現場監督がいた方がいいと思う。

なぜなら、大工は木工事のプロではあるが、その他の工事についても熟知しているとは言えないからである。

現場監督の仕事は見積もりに始まり、工程管理、管理、各工事や材料の手配、工程毎の検査や施工図の作成などなど多岐にわたる。

建て方が終われば数ヶ月は現場に張り付いて作業しなければならない大工さんは確かに現場にいる時間が最も長く、現場のことを一番よく知っているかも知れないが、上に書いたようなことを全てやりながら自分の手を動かして木工事するのは難しいんじゃないかと思う。

自分ならきっとどこかでオーバーフローしてミスをするだろう。

そういった理由から現場監督はいるべきだと思うのだが、先に書いた「良い」現場監督というのがまた希少な存在なのだ。

良い現場監督というのは、本当にいろんなところに目が届く。

おそらく見積もりの段階から現場が組み上がっていく様子を思い描くことができており、起こるであろう問題が先回りして見えている。

逆に、良くない現場監督の特徴としては、現場を大工や職人任せにしていて、ほぼ材料や職人の手配屋と化しているというものだ。

設計者→現場監督→現場の職人という指揮系統も曖昧になるし、そういう現場は怖いと思う。

やはり付き合うなら良い現場監督がいる工務店が良い。

設計事務所との仕事経験

次に、ある程度設計事務所との仕事をやったことのある工務店の方がいい。

自社設計しかやったことのない工務店は、往々にして施工のやり方や使ったことのある材料のバリエーションがいつも同じなので、いつも自分たちがやっているのとは違う設計事務所のやり方を理解しないことが多い。

それから、例えば設計事務所側が指定する何かの呪文のような名前の材料や工法などを聞いたことがなかったりすると、見積もりの時にそれを建材屋に丸投げして、結果として商社が間に2つも3つも入って中間経費がかさんだりするというリスクもある。

それがなんなのか自分で調べようともせずにすぐにこちらに聞いてくるのも勉強しようとする姿勢がないものと判断される。

現場経験が豊富で多岐にわたって勉強熱心な工務店の方が設計事務所案件には向いていると思う。

断熱気密施工の経験

最後に、突然部分特化した話になるが、私は断熱気密工事の原理原則がわかり、実践している工務店にしか依頼しないことにしている。

を全く使わない建物なら話は別だが、いまどきそんな住宅はほとんど無いであろう。

私の設計は高断熱高気密であるが、設計上のUa値やQ値が良ければいいという話ではなく、そこに適切な施工が伴わなければ欠陥になりうるということである。

お施主さんがお金を出した断熱材も入れ方が悪かったら効果は数%~数10%落ちてしまう。

つまりそれはお金を捨てているのと同じ。

設計者が断熱材の厚さや「気密シート施工」と図面に書いてもそれが適切に施工されていなければ性能は担保されない。

断熱材は入っていればいいでしょ、気密シートは張ってればいいでしょというような意識ではダメなのだ。

やはり、どうして断熱材は隙間なくいれなければならないのか?気密シートが必要なのか?という理解がないと、きちんと施工しようという意識にならないと思う。

なので、気密施工したことなくてもしたことないとか、経験ないのに簡単に「できますよ。」という工務店とは怖くて仕事はできない。

やったことないけど、これからやりたいから教えてくださいというのであれば、そういうやる気のある工務店とは一緒にやっていきたいとは思うが・・・。

これは断熱気密だけの話ではなく、先に書いた工務店の勉強熱心さや品質管理などの意識の高さを測るものでもあると思うので、工務店を探している人は断熱性能や気密のことについて質問してみるのもいいかもしれない。

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