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窓学展から窓を考える


YKKapが取り組む研究活動の成果である「展」が、地元、東北大学トンチクギャラリーにやって来たので見に行ってきました。
地方にも巡回してくれるのは嬉しい。

フライヤーによると「窓学」とは「窓は文明であり、文化である」という思想のもと窓を学問として探求する事とのことです。

ふむふむ・・・。
展示は期待していたほど多くはなく、ギャラリーには私しかいませんでしたが、ある意味「ドヤッ!」って感じの展よりも興味深く考えさせられることがありました。

特におもしろかったものをいくつか紹介します。

・窓の進化系統学
建築史的に窓がどのような進化の系統をたどって来たかを時代や地域によって分類しています。
世界各地の伝統的な窓の様式からモダニズムにおける窓の様式まで系統樹にまとめられていました。

・窓の仕事学
働く窓についての調査の記録です。
製塩所や干し柿や藍染めを乾かすためなど、主に通風ですが、生産現場における開口部の機能についてと仕組みについてでした。
これは住居であれば、別の展示にあった環境制御がその機能の一つであるでしょう。

・窓の環境制御学
日射侵入時の窓辺の温度変化や、窓の配置による通風のシミュレーションや実測を名作住宅で行っていました。

・窓の記録学
「日本建築には窓がない。あるのは、柱と柱の間の柱間装置である。」という言葉に納得。

・窓の民俗学
インドネシアの伝統的住居調査の記録。
原始住居の分析から、本来住居は暗い場所であるが、そこから出て行くための窓を付けることによって精神的世界と外界を行き来しているという点において窓は矛盾を抱えている、というのが人類学者らしい主張であると感じました。
建築人類学という分野があるということで、非常に興味が湧きました。

者が窓を考える時、だいたい窓の3つの機能を意識します。
すなわち、採光、通風、眺望ですね。
場合によって、眺望のバリエーションである目隠し(眺望を取るか否かという選択)と装飾が加わることもあります。
または採光のバリエーションとして採熱という機能もあります。

比較的敷地と無関係にプランが決まっている建て売り住宅や最初からプランが決まっているハウスメーカーの家などは、外から眺めると窓がでたらめに付いているような印象を受けます。
およそ見たくもないような隣の家の裏口に向かって大きな窓が付いているなどがその例です。
ですので、我々はそんなことにならないように適切な場所に適切な機能の窓を配置するように心がけています。
窓の機能も時には3つの機能のうち一つだけとして、他の機能は他の窓に請け負わせるというように。
例えば、良い景色を切り取る窓は枠が見えないフィックス窓にして、通風は小さな窓や細長い窓、光だけ欲しい時には天窓など・・・。
これらを意識しながら、窓の形状や開き方、ガラスの種類などを決めていきます。
先ほどの建築人類学ではありませんが、窓は外とつながるインターフェイスなので、ある意味外の世界や環境を写し取っているのです。

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