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はじめての断熱気密

と言っても私自身のことではありません。
現在、工事中のでは、断熱気密よりはどちらかと言うと大工の技術や伝統工法と言ったものに重きを置く工務店に施工してもらっています。
や伝統工法を謳う工務店にありがちな傾向として(もちろん最近はそうでない工務店があることも承知していますが)断熱や気密と言った技術に力を入れないという傾向があります。
大工の本来の仕事は木を扱う仕事ですので、伝統に重きを置く大工であればあるほど、建材であるやいわゆるビニールシート(正確にはポリエチレンシート)なんてものは大工が扱うものではないという意識があるのだと思います。

今回は工務店のそのような性格を見越して断熱気密工事は大工さんでなく専門業者にお願いする予定でした。
が、予定していた断熱気密工事業者が忙しすぎて2ヶ月待ちになるとのこと。
断熱工事が終わらなければ工事を次に進めることができないので焦りました。
工務店に相談すると、「これからそのような工事も増えるだろうから経験としてなんとかやってみる。」と言う頼もしい返事。
私の指導(というのもおこがましいですが)のもと大工さんが断熱気密工事をすることになりました。

この大工さん、構造材の手刻みも造作もとても丁寧で腕のいい大工さんです。
しかし、袋に入っていないや防湿気密シートを扱ったことはありません。
これらの材料への抵抗を無くすために私がはじめに伝えたのは、「断熱材も防湿気密シートも手刻みの時のホゾや仕口と同じような精度で考えて下さい。」ということでした。
腕のいい大工であれば、この言葉でそのプライドに火がつくであろうと考えたのです。
でも心の中では、結構手直しも必要になるだろう、も一発でC値0.5以下の目標を達成するのは難しいだろうと思っていました。

断熱工事が進む現場に足繁く通うこと数日、壁の断熱材が入ったところを見てびっくりしました。
隙間やよれもなくビシッと断熱材が入っていたからです。
(なぜ断熱材がきっちり入っている必要があるのかは過去の記事をご覧下さい)
ほとんど直すところがない!
ここは大工さんを多いに褒めて、引き続き屋根の断熱をしてもらいます。

勾配天井は壁との取り合いなどで断熱欠損が発生しやすいので、そういった箇所はあらかじめ注意して施工してもらうよう伝えます。
次に肝心の防湿気密シート貼りです。
せっかくびしっと断熱材が入っていてもこのシートが隙間だらけでは断熱材のパフォーマンスを十分に発揮できません。
そして、今回の住宅の様に勾配天井や下屋がある場合はシート貼りが難しくなります。
断熱材の上ではテープがくっつきにくいので、シート同士のジョイントは木材の上でテープを貼るように伝えます。
大工さんも慣れてきたのかスピードアップし気密シート貼りが完了。

ドキドキの気密測定です。
バズーカのような筒をセットし、測定器を接続、すべての窓が閉まっていることを確認してファンが回り始めます。
建物内を減圧していくと、隙間から外の冷たい空気が入ってくるのがわかるので、隙間を発見するためにあちこち動き回りながら隙間がありそうなところに手をかざしたり顔を近づけたりして調べます。
きっとシューシュー空気が入ってくる場所があるだろうと思いながら調べ回ってみたのですが、意外にも肌に感じるような漏気はありませんでした。
測定結果はC値0.4㎠/㎡!

巷には0.1なんて猛者もいるので、めちゃめちゃ良い数字と言う訳ではありませんが、自主基準である0.5を一発で、しかも断熱気密工事が初めての大工さんが達成したというのは評価に値すると思います。
私が事務所をやっている宮城県は東北地方の中では実は断熱途上県です。
断熱気密をきちんとやっている工務店やの比率は寒冷地の割に低いです。
ですので、こう言った経験を元に断熱気密工事への意識を持って取り組んでくれる施工者が増えれば良いと思います。

ということで、良い結果が出たところで今年の仕事納めとさせて頂きます。
本年もありがとうございました。
皆様よいお年を!

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