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照明計画〜欲しいのは光

照明をテーマにした「ハルカの光」というドラマがあります(NHK Eテレ、2021年2月8日(月)から5回シリーズ)。
を取り巻く人々のストーリーを描く、今までなかったタイプのドラマです。
このようなドラマができた背景には、インテリアにおける光=照明に注目が集まっているに違いない、と思い今回はについて書きます。

住宅のの中で照明計画をする時にいつも頭に思い浮かべる言葉があります。
それは「欲しいのは光であって器具ではない」という言葉。
巨匠にして住宅建築の名手、吉村順三氏の言葉です。

照明計画初心者にありがちな失敗は、分厚いカタログの中からカッコ良さそうな照明器具をあれやこれやと選ぶことです。
それらを配置した部屋はまるで照明器具のショップのようになってしまいます。
高級な器具ばかりならこれみよがしで恥ずかしい。
先の言葉に従えば、器具は目立たない方が良いのです。
日中は自然光があるので、夜に照明を点けた時に光だけがあるような状態が望ましい。

わたしの設計を例に出して具体的に説明してみます。

上写真:東中田の家

まず、ベースとなる光でよく使うのは、モーガルソケットにクリアボール球という組み合わせです。
モーガルソケットはレセプタクルとも呼ばれるいわゆるソケット=口金です。
これにクリアボール球(かつては白熱電球、今はLED)つまり、透明なガラス玉の電球を取り付けます。
モーガルソケットは電気部品なのでお値段数百円とローコストなのも助かります。
モーガルソケットの素材はプラスチックではなく磁器で色は白、クリアボール球は透明なので、日中照明を点けていない時は白い壁に溶け込んでその存在がほとんど気になりません。

私はコスト面からベース照明にモーガルソケットを使うことが多いですが、もちろんそれに限らずダウンライトや建築化照明によることもできます。
ダウンライトの時は天井に沢山のダウンライトを付けすぎないよう注意です。
建築化照明もやりすぎるとハウスメーカーのモデルハウスや商業建築のようになってしまうのでさじ加減が大事です。

それをベースにダイニングのペンダントなどだけには名作照明などを使います。
ダイニングのペンダントはデザインだけでなく、光の出方も考えます。
よく使うルイスポールセンのPHやパークフース、AJランプなどはテーブル面への光だけでなく、天井面へも光が出るので天井に反射する間接光が室内を柔らかく照らします。
また、テーブルに座った時目線の高さの光をシェードでカットしているので眩しくないのも良いところです。
ベース照明の明るさによって、天井への反射光があるものを使うかどうかを選択しています。
ダイニングテーブル付近にベース照明を設置しない、またはあまり明るくない場合は、ガラスシェードのペンダントライトなどを使い明るさが全体に広がるようにしています。

上写真:弓の町の家

照明器具の禁じ手としては、その姿を揶揄して「座布団」と呼んでいるシーリングライトがあります。
建売住宅やマンション、アパートなどでもっともよく見かける大きな円形や四角形の天井に付いているあれです。
器具を一つつけるだけで明るさを確保でき、取り付けも1箇所で済むのでそうしているのでしょうが、天井面から部屋全体を満遍なく照らすのは陰影や奥行きがなく雰囲気がないのでわたしは使わないことにしています。

雰囲気といえば、光の色も重要です。
光の色には黄色ぽいものから白っぽいものまで電球色、昼白色、昼光色とあります。
電球色は文字通り白熱電球の暖かい色です。
雰囲気重視の空間、例えばホテルのロビーやバー、高級レストランなどはこういった色の光を使っています。
電球色はくつろぎの光です。
それとは逆に昼光色はオフィスやコンビニの蛍光灯(最近は昼光色のLEDも多い)の光です。
作業や執務をするには明るくて良いのですが、くつろぐための光ではありません。
日本ではなぜかこの昼白色の座布団照明をリビングなどで使っている家が多いのですが、ヨーロッパ人などに言わせると「あれは仕事をする時の光。日本人は家でも仕事をするの?」と言われます。
ただ、最近ではインテリアに対する意識が高まってきたせいか、リビングなどで昼白色を希望する人は少なくなってきました。
昼白色の欠点は、明るさが足りないと貧相で寒々しくに見えるということです。
そのため、コンビニなどでは沢山の器具を天井につけています。

ただ、電球色にも欠点があり、本や新聞などを読む時、あるいはでの作業には明るさが足りなかったりすること、色が正しくわからないということです。
これは電球色であっても明るさが十分にあれば解消されるので、読書する場所の近くにフロアスタンドなどを置くなどで対応できます。
台所での作業や色が正しくわからないことについては、台所やホームオフィス、洋服を選ぶクローゼットなどだけ昼光色や太陽光に近い昼白色にするという手もあるでしょう。
その時注意したいのは、同じ空間で違う色の光を混ぜないということです。
オープンな台所などではやむを得ない場合もありますが・・・。

今回は照明計画の基本となる考え方について書きました。
実際には、部屋の用途や機能、家具の配置や動線などいろいろなことについて考えながら計画していますので一筋縄ではいきませんが・・・。

 

 

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