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減額案(VE案)


写真は住宅の見積書です。
全部で82ページあります。

昨年のウッドショック以降、半導体ショック、原油価格の高騰、物流経費の増加などの影響で建設費の上昇がとどまるところを知りません。

昨年秋ころの予想では、住宅の建設費は2割程度上がるだろうと言われていましたが、最近上がってきた見積もりでは予想通り以前よりちょうど2割見積もり金額が上がっていました。

これらの住宅はウッドショック前から計画していたため、ウッドショック以前ので計画しています。
たかだか2割と思われるかもしれませんが、工事費3000万円であれば3600万になり、資金計画そのものが難しくなります。
そこで、なんとかして予算に収まるように減額をしなければなりません。

のことを我々はVE案と呼んでいますが、これがValue Engineeringの略だというのは恥ずかしながら最近知りました。

一昔前であれば、先生、巨匠建築家の鶴の一声(というか理不尽な恫喝=パワハラ)で施工業者が数百万の値引きをしてくれることもあったかもしれません。
しかし、今時、誰もそんな人のしたものの施工を請け負ってはくれないでしょう。

一方、ハウスメーカーやパワービルダーは結構簡単に100万円単位の値引きをしてくれたりしますが、これには裏があると思った方がいいでしょう。
彼らは常に他者との競合にさらされているため、大幅な値引きをチラつかせてクロージングしたいのです。
そのため、最初から値引き分の価格を転嫁して見積もりを出してきている場合が多いです。
実は値引きではなくて、最初から高い見積もりを出しているということです。
工務店とは基本的に利益率が全然違うので、このようなことが可能なわけですが、どちらが実質価値が高いかは考えればわかることです。

では減額の内容は誰が考えるのか?
中には、工務店や施工者に減額リストの作成をお任せしてしまう建築家もいます。
この場合は、任せられた工務店や施工者は建築家の設計意図を知らないわけですから、とりあえず見た目が変わらないように安易な仕様変更をすることが多いです。
例えば、目に見えない材料、例えばを減らすとか、見た目に大差ない材料、例えばの塗り壁を白いビニルクロスにするとか、無垢の床を複合フローリングにするなどです。
確かに写真に撮った時の見た目は変わらないかもしれませんが、実際には大きな違いです。
そのようにして金額を合わせたところで施主は満足するでしょうか?
むしろ安物買いの銭失いとなってしまうでしょう。

そんなことにならないように、私の事務所では工務店や施工者が出してきた見積もりを詳細にチェックします。
自分の設計意図を守るために減額案は人任せにはできません。
これまでの施主とのヒアリングで、施主がどういったところに価値を置いているのかわかっているのも自分です。
見積もりの中には、実際には不要なものが入っていたり、数量が多すぎたり、または足りなかったりと言ったこともあるので、まずは基本的な部分の間違いがないかチェックします。
次に減額のための仕様変更の内容をピックアップします。
オーバースペックな設備機器を見直したり、主要な部分以外の仕上げを見直したりします。
性能を落とさずに減額するための工法を検討したりもします。
工務店が建材屋に調達を丸投げしていたりする場合には、本来かからない中間経費が発生している場合もあるので、そのような場合には直接購入できるような流通経路を伝えたりもします。
それらをリスト化して、再度見積もりを提出して説明します。
それらのリストの中には施主としては諦められないものもあるでしょうから、その場合は申し訳ないですがお金を出してもらいます。
施主に自分の中の優先順位を明確にしてもらうという意味もあります。

一つ一つは数千円から数万円なので、何百万円も減額しなければならないのにそんな金額に意味があるのか?と言われたりもするのですが、住宅は部品点数が多く、見積もりはそれらの積み重ねなので、減額する場合もわずかな減額の積み重ねでしか金額は下がりません。

工事総額に対する最も大きな支配要因は面積ですが、工務店に見積もり依頼する段階で設計図書が全て出来上がっているわけで、その段階で面積を変更するのは全ての設計をやり直すことになるので、何とかして避けたいところです。
そのために、プランする前に資金計画から判断して大体どこくらいの大きさの建物が建つのかを考えなければなりません。

建築家によっては好き放題大風呂敷を広げて、予算オーバーしたので予算を増やしてくださいとお客さんにお願いするスタイルの人もいるかもしれませんが、あいにくと言うか幸いと言うか私の事務所に依頼してくれる人は特別お金持ちというわけではないので(失礼)予算に対してはどうしても慎重にならざるを得ません。

建築家にはエンジニア的な要素もあるので、工事費用(予算)のengineeringも重要な仕事と言えるでしょう。

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