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手描き図面と色鉛筆

本日は雨。静かに用の図面を描いています。

私はファーストプレゼンは必ずで出します。
画用紙に下書きを描いて、ドローイングペンを入れて、水彩色鉛筆で色を着け、筆につけた水で色を溶かす。

このステッドラーの水彩色鉛筆はもう20年使っています。
実はこれは自分で購入したものではなく、大学卒業後最初に勤めた仕事を辞めて建築を志すことになった時に上司がプレゼントしてくれたものです。
私の大学での専攻は心理学と当時まったく食えない学問でしたので、卒業後は自分の好きなを生かした職業に就こうと思いました。
そこで目指したのがインポートバイヤーでした。海外に行って輸入雑貨屋の商品を仕入れてくるという仕事です。
そこで、まずは輸入雑貨屋を経営している会社に就職しました。
女子が好みそうなおしゃれな輸入雑貨屋でエプロン着けて、棚のグラスを磨いたりしていました。
数ヶ月働いて気がついたのは、雑貨屋にインポートバイヤーは必要ないということ。
商品は直接仕入れに行く訳でなく、グラスならグラスの、テキスタイルならテキスタイルの輸入商社から仕入れられるのです。
完全にリサーチ不足、若気の至りでした。

そこで、わずか1年でその会社を辞め建築の道を志すわけですが、かつて一世を風靡した服飾ブランドのデザイナーであったそのお店の上司が、自分がデザイナー時代に使っていた36色セットのステッドラーの水彩色鉛筆を私にくれたのです。
何かアドバイスをもらった訳ではないのですが、たった1年で辞めるどうしようもない若造でも、それがかつてものづくりに携わった人からこれからものづくりに携わる者へのはなむけであることを感じ取りました。
色鉛筆のケースには今もその上司のネームが貼られたままですが、今でも時々その時のことを思い出して初心に返ります。

CG全盛の時代でもなぜ手描きなのか?というところには賛否両論あると思いますが、やはり自分の作るものを相手に伝えようとする時、手描きの方が伝わると思うからです。
その雰囲気や柔らかさ、作り手の想い。
センチメンタルですが、そういった機微を感じ取ることができるのもまた人間であり、家はそんな人間が住む場所である。
先日、ある大工さんとなぜプレカットではなく手刻みがいいのか?という議論をしたのですが、それもまた同じことなのかもしれない、とこの記事を書いていて思いました。

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