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東中田の家 断熱工事 調湿性は両刃の剣

の断熱工事がほぼ終わりました。
この家の壁の断熱にはとウッドファイバーというを使っています。
時々、断熱材は何がいいのか?という質問を受けます。
よくネットや広告などで〇〇という断熱材だから断熱性能が高いというような記述を見かけますがこれは単純化しすぎと言えるでしょう。
確かに同じ厚みであれば断熱性の高いものと低いものがあります。
例えば同じ厚みの密度16kgの高性能とポリスチレンフォーム3種bの熱貫流率(熱の伝えやすさ。数字が低いほど熱が通りにくい。)を比べるとポリスチレンフォームの方が1.35倍ほど性能が良いことになります。
しかし、グラスウールの厚さを厚くすれば同じ断熱性を得ることができます。
一方、同じ性能を得るためのコストだとグラスウールが一番安くなっています。

それから、それぞれの断熱材には正しい施工方法があります。
断熱と気密、防湿(それに換気も)はセットで考えなければなりません。
いくら高価で断熱性の高い断熱材を使っても正しい施工をしなければ、それは図面に描いただけの絵に描いた餅になってしまいます。
例えば、グラスウールを壁内に充填する場合は柱と柱の間に隙間なく充填することが大事です。
よく断熱材施工中の現場の写真をネットで見かけますが、袋入りのグラスウールの耳を柱の内側に折り込んで留めつけている写真がいまだにあります。
これでは、柱の間に隙間ができてしまいます。
そして、この様な隙間ができただけで本来の70%弱の性能しか得られないことになってしまいます。

また、室内の水蒸気をグラスウールの中に入れないように防湿フィルムを施工することも大事です。
私も多くの場合、コスト的な理由からグラスウールの室内側の防湿シートを貼るという工法を使う場合が多いです。

これはこれで正しい方法と言えます。
しかし、本心ではどうもこの石油化学製品の防湿シートに違和感を感じています。
それは現代の家づくりの材料についての違和感とも言えます。
2011年に起こった東日本大震災の後、津波で被害を受けた友人の家の片付けを手伝いに行きました。
その時被災地で目にしたのは、いわゆる瓦礫と化した家々、いや家であったであろうものです。
うず高く積み上げられた瓦礫の中にはぐしゃぐしゃに濡れたグラスウールやビニールクロス、ベニヤに木目のシートを貼っただけの板などがたくさん見られました。
言葉は悪いですが、それらは美しいとは思えない「ごみ」でした。
海に流出したこれらのごみたちはおそらく大量のマイクロプラスチックになってしまう。
一方、山奥の廃村などで朽ちて茅葺き屋根が落ちた家などを見かけることがあります。
これらに対しては不思議と「ごみ」という感覚を抱かない。
むしろ朽ちて自然に還っていく自然の摂理のようなものを感じます。
それらの体験から、家は自然に還る素材で作りたいと思っています。
できればグラスウールやビニールシート(ポリエチレンシート)は使いたくない。

今回はいろいろな調整(やお施主さんの理解など)が上手く行きセルロースファイバーとウッドファイバーを採用することができました。
セルロースファイバーは古紙を繊維状になるまで粉砕リサイクルしたものです。
紙は元々は木なので、といっても良いと思います。
ウッドファイバーはその名の通り木の繊維です。
どちらも断熱性能(熱貫流率)はほぼグラスウールと同じです。
まずはセルロースファイバーを柱間に吹き込んでいきます。

柱の太さは12cm角ですので、12cmの厚みのセルロースファイバーが吹き込まれます。
そして次に室内側に付加断熱としてウッドファイバーを施工します。
付加断熱というと外側に施工することが多いのですが、大工さんの手間が結構かかることと、外部での作業のため天候に左右されやすいということで、今回は室内側にウッドファイバーを入れています。
厚みは5cmなので、壁の断熱材の厚みは17cmとなります。
外側に付加断熱の場合、私がでやる場合には20cm程度のことが多いので、それよりはほんの少しだけ少ない感じです。

しかしながら、セルロースファイバーとウッドファイバーにはグラスウールには期待できない効果があります。
それはと蓄熱性です。

蓄熱は文字通り熱を蓄えるということです。
例えば暖められた石は熱源がなくなってからもしばらくはホカホカと暖かいですが、これは石が蓄熱しているからです。
一方ガラスや金属などは暖めてもすぐに冷えてしまいます。

次に調湿性、空気中の湿度が高い時は水蒸気を吸い、空気が乾燥すると水蒸気を放出して湿度を一定に保とうとするというのが調湿性です。
調湿性ですぐにイメージできるものに木があります。
テカテカに塗装されたフローリングを歩くとペタペタしてしまう夏の湿度の高い時でも無垢の木の床がペタペタしないのは木がうまく湿気を吸っているからです。
これらの性質をうまく利用すれば湿度の変化や温度の変化を緩やかにすることができます。

太陽が出ている間に部屋の温度が上がり、その熱を蓄えておけば日が沈んでからもしばらくはその熱の恩恵にあずかることができます。
ジメジメした日でも部屋の壁や床が水蒸気を吸ってくれればさらっとした状態を保つことができます。

セルロースファイバーやウッドファイバーという素材はそれらの機能があるのですが、これらの中でコントロールが難しく悩ましいのが調湿性です。
グラスウールを施工する時のように部屋の空気と断熱材の間に防湿シートがある場合は壁の中に水蒸気が入りません。
その代わり、断熱材と室内の空気は分断されているため断熱材に調湿性があってもそれを活かすことはできません。

ですので、セルロースファイバーやウッドファイバーの調湿性を生かしたい場合は防湿シートを入れません。
単純に考えればそれで良いように思いますが、実はこれがそう単純ではない。
部屋の水蒸気が壁の断熱材の中に入り込むということは、壁の内外を水蒸気が自由に移動できるということを意味します。
冬場であれば、室内の水蒸気は外に出て行くし、夏場は逆に外の水蒸気が室内に入ってくるということです。
確かに調湿する断熱材がダムの役目をして急激な湿度の変化は抑えてくれます。
しかし、水蒸気はじわじわと移動するので、冬であれば室内は乾燥しやすく、夏は高湿度な状態になりやすくなります。

それに比べて室内側に防湿シートを貼って全熱交換型の換気システムを使っている建物では壁の中に水蒸気が移動しないので、を使えばすぐに湿度は下がります。
私の家はセルロースファイバーで防湿シート無しですが、防湿シートありの家と比べてみるとざっくりですが夏冬ともに5~10%程度湿度に差が出ているように思います。
夏場、エアコンで除湿しても同時に外からの水蒸気が流入してくるからです。
つまり断熱材の調湿性は両刃の剣なのです。
湿度を機械的にコントロールしない時には、調湿性がある方に軍配があがると思います。

もう一つ考えなければならないのは、壁の中に水蒸気が入る時、冬場なら暖かく水蒸気を含んだ空気が面に移動するにつれて温度が下がって行けば壁の中で結露する可能性があるということです。
そこで結露するかしないかをシミュレーションします。
WUFIというシミュレーションソフトを使って仙台の過去5年の気象データをもとにシミュレーションしたところ、この家の壁の断面構成では結露は見られないという結果が得られました。
仙台よりも寒冷な場所では違う結果になるはずですので、単純にセルロースファイバーだから結露しないという判断は危険です。

どのような断熱材を使うか、調湿性を生かすかどうか、防湿シートを入れるかどうかと言うことには様々な議論があるかと思います。
が、この家では「ポリエチレンシートを使いたくない」「環境負荷の低い断熱材を使いたい」「ウッドファイバー、セルロースファイバーの調湿性を生かしたい」の3点から、この様な方法となりました。
予算のこともありますし、断熱材の種類と工法については、イメージではなく目的や建設地に応じてケースごとに検討する必要があると言えるでしょう。

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